理事長雑感

医療法人豊岡会の理事長が綴る、雑感という名のメッセージ。

ジョハリの窓

人生を論じたり分析したりする場合,いろいろな立場があります.

単元論のように,ある一つの原理であらゆるものを説明しようとする考え方があります.

もう少し進んだ概念で(あるように私には感じられる),物事を相対立する二つの原理または要素に基づいてとらえる立場もあります.

理事長近景光があれば闇があるでしょう.陽に対する陰,物事の善と悪,現象と本体,デカルトの提示する心身二元論は,思考的基盤としていろんな領域でわれわれに明確な方向性を示してくれています.

私自身,物事を決める時,物事をなるべく単純化して二分法を利用してきました.人生は決断の積み重ねであることはまぎれもない事実であるからです.

折に触れて右か左か,前進突破か後退か,卑近な例では治療するかしないか,ある会に出席するかしなしか,これを買うか買わないか,おやつを食べるか食べないか,生きていく上でいつでも決断がつきまといます.

しかしながら,少し年を取り経験を積んで(?) 新人の指導をするようになると,二分割の間にはグレーゾーンがあることを意識せざるえなくなりました.現実にはこのグレーゾーンがかなり大きく,この三分割に対していかに対応するかが重要かなと.

例えば,右か左かの結論を出さないで「結論を先延ばしにする」ということが,「一つの立派な選択肢になりうる」のだと理解するようになったわけです.

ここ10年くらいはさらに進歩して(進歩したと自分では思っている),物事をなるべく四分割で考えるようにしています.

そこで,今回は「ジョハリの窓」を紹介したいと思います.

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図1.クリックで拡大

その理由(わけ)は,かつて「何か物事を始めようとしたらPDCAサイクルが重要である」と医学記憶術,免許皆 伝のp143に記したことがあるのですが,PDCAサイクルに入る前にジョハリの窓を通しての自己分析が必要である,と知ったからです.(PDCAとは, 図2の右側に記載してあります)

ジョハリの窓とは,図1のようなもので自己分析のためには有名な方法です.自分が知っている領域, 知らない領域,そして他人が知っている領域,知らない領域の4つに分けると,自分が知らずに他人が知っている「盲点」,自分が知っていて他人が知らない 「秘密」があきらかになります.

図2. クリックして拡大

図2. クリックして拡大

図2のように,解放された領域を拡大することは自己の成長につながります.

解放された領域を拡張するためには,「自分を隠さずオープンにすること」と「他人のアドバイスを素直に受け入れる」ことが肝要であり,初めて「気づき」が生まれます.

その「気づき」が成長のスパイラル,すなわちPDCAサイクルに入ることが可能になるわけです.

「自分を隠さずオープンにすること」,「他人のアドバイスを素直に受け入れる」これらはすべて「コミュニケーション」と「感謝の気持ち」があってのことです.

従って「仕事への集中」とともにコミュニケーション」と「感謝の気持ち」,3つの要素を,人事考課に取り入れる所以です.

千田ちだ 金吾きんご 記)

理事長雑感

当医療法人は、新しい局面に対して新たな目標を掲げ、従業員一丸となって着々と準備と実行を進めております。

この整備の段階で、従前の人事考課が十分な客観性をもって行われていなかったことを鑑み、昨年来人事部と現場の代表者により、人事考課方法の改善による新たな取り組みが行われています。

それは、法人各部門の責任者と職員との密なる個別面談を実施し、自己評価、将来の目標などを共有することにより、職員各々のキャリアアップと賞与への還元を目指したものです。

理事長の立場から考えますと、実際のところ職員を客観的に評価することの難しさを痛感する今日この頃です。
その一番の理由は、私共の仕事は数字で測れない要素が数多くあるからです。車を何台販売したか、売買契約をいくつ結ぶことが出来たか、というある意味とてもドライな観点だけで考課することの出来ない領域が、私共の課せられた仕事だからです。

私共の仕事は、「心」と「手」で行われるものだと理事長挨拶の項でも述べました。看護の「看」は、「手」と「目」で出来ているというのは、面白話ではなく本当のことだからです。

そこで今後の人事考課について以下のような考え方を示しました。今後これが具体化していくことが、「幸せ」への近道であると思っています。

その考え方とは、3つの要素で構成されています。それは、

1. ヒトとつながること・・・コミュニケーション

仕事仲間と上手に付き合うこと、患者さんやそのご家族としっかりとつながること、これが幸福に感じる第一歩です。

2. 常に「感謝」の気持ちを持ち続けること・・・カンシャ

普通のことを当たり前と考えず、「親切」に接したときに純粋に感謝する「心」を持つことが大事です。

3. 目の前のことに集中すること・・・コンセントレーション

まさに眼の前にある、今行なっている仕事に最大限の気持ちと技術を集中することで、悔いのない満足感を得ることが可能となります。

以上の3つの要素から、「私たち自身の幸せ」=「患者さんの幸せ・満足」となるための努力をどれだけ行なったかという点を「自己評価と上司からの客観的評価」に組み入れたいと考えています。

かつて医療というのは、きつい、汚い、危険という3K職場といわれてきました。それは否定できない側面がありますが、誰かがやらなければ高齢化社会を支えることができません。私共は、正面から向き合い使命感を持って仕事に取り組んでおります。
(当然それに見合った評価、対価があってしかるべきです。しかしながら全国的にいまだ十分な理解があるとは思えません。当法人はそのブレイクスルーを目指していることは、理事長挨拶に述べたとおりです。)

「自分で自分を見つめ、目的をはっきりと持ち、疑問に思ったことはお互いの意見を出し合い、また意見を言える環境を作り、自分も患者さんもご家族も満足して幸せを感じられる。」
そんな医療法人をこれからも目指してまいります。

その他私の雑感について興味のある方は、浜松医科大学呼吸器内科ホームページの「前科長から」をご覧ください。一部重なるものもありますが。

千田ちだ 金吾きんご 記)